若いアスリートにとって、睡眠は最も過小評価されているパフォーマンス向上ツール

               
             
                                       Nev Davies(ネヴ・デイヴィス)

英国バークシャー州レディングを拠点に活動する外傷・整形外科医。成人の膝の手術および小児の整形外科疾患を専門とし、Royal Berkshire Hospital、Circle Hospital、Spire Dunedin Hospitalなどで診療を行っている。現在は、若年層のスポーツ傷害の予防に特に力を入れている。Power Up to Playの理事(Trustee)として、英国の地域スポーツや学校スポーツにおける傷害予防への理解を広め、継続的に取り組むための仕組みづくりを目指して活動している。

この記事は 「Sleep: The Most Underrated Performance Tool for Young Athletes
の翻訳転載です。著者のNev Davies氏の許可を得て公開しています。

原文はこちら:
Sleep: The Most Underrated Performance Tool for Young Athletes|Nev the Knee

目次

この記事は 約4分 で読めます。

若いアスリートにとって、睡眠は最も過小評価されているパフォーマンス向上ツール

はじめに

子どもがスポーツで良いパフォーマンスを発揮できるように、親がサポートしようと考えたとき、多くの場合、まず思い浮かぶのは、トレーニング、専門的な指導、栄養、新しいシューズや用具など、目に見えるものです。
しかし、見落とされがちな、非常に強力なパフォーマンス向上要素があります。
睡眠です。
もし睡眠が、パフォーマンスを向上させ、回復を早め、ケガのリスクを減らすサプリメントとして利用できるものだったら、アスリートが利用するでしょう。
それにもかかわらず、現在、多くの若いアスリートが慢性的な睡眠不足に陥っています。
私のクリニックでは、週に何度もトレーニングを行い、学校生活と競技を両立している非常に意欲的な10代の若者たちを日常的に診ています。
しかし、彼らの多くは、身体に必要な睡眠時間を大きく下回る睡眠しかとれていません。
成長期のアスリートにとって、睡眠は単なる休養ではありません。
必要不可欠なトレーニングの一部なのです。

1.なぜ若いアスリートに睡眠が重要なのか

思春期は、身体が急速に発達する時期です。
この時期、身体は成長し、適応し、トレーニングによる負荷に反応しています。
そして、こうした適応の多くは睡眠中に起こります。

成長と身体の発達

深い睡眠は成長ホルモンの分泌を促します。成長ホルモンは、以下のような重要な役割を担っています。
・骨の発達
・筋肉の成長
・組織の修復
・トレーニングからの回復
これは、身体がまだ発達段階にある若いアスリートにとって、特に重要です。

筋肉の回復

トレーニングによって筋肉には小さなダメージが生じます。身体は、回復する過程でその筋肉を修復し、より強くしていきます。
睡眠は、以下の回復をサポートします。
・筋肉組織
・エネルギー貯蔵(グリコーゲン)
・免疫機能
十分な睡眠がなければ、回復がトレーニングによる負荷に追いつかなくなってしまいます。

学習とスキルの向上

スポーツは、単なる身体的な活動ではありません。神経系の働きも関わる活動です。
睡眠中、脳は運動学習を定着させます。これにより、若いアスリートは日中に練習したスキルを記憶し、さらに磨いていくことができます。
これには、以下のような能力が含まれます。
・協調性
・反応速度
・判断力
・技術の向上
簡単に言えば、睡眠は、その日に行ったトレーニングを定着させるのに役立つのです。

2.睡眠とケガのリスク

若年スポーツにおいて睡眠が重要である理由の一つに、ケガの予防との関連性があります。
疲労は、身体の動きや反応に影響を与えます。
アスリートが疲れていると、以下のような状態になりやすくなります。

  • 反応時間の低下
  • 協調性の低下
  • 身体の動きをコントロールする能力の低下
  • バイオメカニクス(身体の動きの仕組み)の変化

これらすべてが、ケガのリスクを高める要因となります。
研究では、1晩の睡眠時間が8時間未満の10代のアスリートは、スポーツによるケガをする可能性が大幅に高いことが示されています。
膝の外科医としての私の経験からすると、疲労は膝周辺の神経筋コントロールに影響を与える可能性があり、それが靭帯の捻挫やACL(前十字靭帯)損傷などのケガにつながる可能性があります。
つまり、睡眠はケガ予防の一部なのです。

3.現代の10代が抱える睡眠の課題

残念ながら、現代の生活は必ずしも10代の若者にとって「睡眠をとりやすい環境」とは言えません。よくある障壁には、次のようなものがあります。

  • 夜遅くまでのスマートフォン利用やSNS
  • ゲームやスクリーンへの長時間の接触
  • 学校の早い始業時間
  • 過密なトレーニングスケジュール
  • 学業上のプレッシャー

多くの10代の若者は、これまで以上に遅い時間に就寝しながら、学校に行くために早起きをしています。その結果、1週間を通して睡眠不足が蓄積していきます。
週末に「寝だめ」をしても、その不足分を完全に補うことはほとんどできません。

4.若いアスリートにはどのくらいの睡眠が必要?

ほとんどの思春期の若者には、1晩あたり8~10時間の睡眠が必要です。
より年齢の低い10代や、非常に活動量の多いアスリートの場合は、9~10時間に近い睡眠時間が理想的なこともあります。
目安としては、

5.睡眠の質を高めるための実践的なポイント

睡眠習慣を改善するために、複雑な対策をする必要はありません。
小さな変化でも、大きな違いにつながります。

1. 就寝前のスクリーンタイムを減らす

スマートフォン、タブレット、ゲーム機などは脳を刺激し、眠りにつくまでの時間を遅らせる可能性があります。
理想的には、就寝の約60分前にはスクリーンの使用をやめることが望ましいでしょう。

2. 就寝時間を一定にする

身体の体内時計は、規則正しい生活リズムがあることで最も適切に機能します。
毎日、だいたい同じ時間に寝て、同じ時間に起きることで、睡眠サイクルを整えることができます。

3. 睡眠に適した環境をつくる

良い睡眠環境は、

  • 涼しい
  • 暗い
  • 静か

であることが理想的です。

4. 遅い時間帯のカフェインを避ける

エナジードリンクやコーヒーを遅い時間帯に摂取すると、睡眠の質に影響を与える可能性があります。

5. トレーニングと回復のバランスをとる

若いアスリートには、トレーニングだけでなく、休養日や回復のための時間も必要です。
睡眠は、彼らが利用できる最も強力な回復手段です。

6.若年スポーツを考えるうえで大切なこと

若年スポーツでは、よりハードにトレーニングすること、トレーニング回数を増やすこと、より早い段階から競技を専門化することに、目が向きがちです。
しかし、パフォーマンスと成長は、努力だけでなく回復によっても支えられています。
睡眠は、以下のことを支えます。

  • 身体の発達
  • スキルの学習
  • 心の健康
  • ケガの予防

健康的な睡眠習慣を身につけることは、親やコーチが若いアスリートをサポートするための、最もシンプルな方法の一つかもしれません。

最後に

若いアスリートに必要なのは、単にトレーニング量を増やすことではありません。
賢くトレーニングし、効果的に回復することが必要です。
睡眠は、身体がトレーニングに適応し、成長し、健康な状態を維持するための基盤です。
ぜひ、シンプルな質問をしてみてください。

「十分な睡眠をとれていますか?」

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