Scott Eckettは、バーンスタプル(イギリス)を拠点に活動するパーソナルトレーナー&オンラインコーチ。糖尿病の改善、栄養、睡眠の最適化、行動変容を専門としています。イギリスのスポーツ&フィットネス指導者団体「CIMSPA(公認スポーツ・フィジカルアクティビティ管理機構)」のメンバーでもあり、持続可能な習慣を身につけ、長期的な変革を実現するためのサポートを行っています。
この記事は Sleep: The Overlooked Key to Managing Type 2 Diabetes の翻訳転載です。著者の Scott Eckett さんの許可を得て公開しています。
目次
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睡眠と2型糖尿病管理の見落とされがちな鍵
睡眠は贅沢ではなく、血糖コントロールの「柱」
2型糖尿病の管理において、睡眠は単なる休息ではありません。インスリン感受性や血糖代謝、さらには長期的な健康にまで深く関わる「重要な柱」なのです。
近年の研究は、睡眠の質と時間が血糖コントロールにどのような影響を与えるのか、科学的な根拠を次々に明らかにしています。今回は、睡眠と糖尿病の関係性を詳しく掘り下げ、睡眠不足と血糖の乱高下という悪循環から抜け出すための実践的なヒントをご紹介します。
睡眠とインスリン抵抗性の関係
深い睡眠中、私たちの体はインスリン感受性を高め、細胞が効率的にブドウ糖を取り込めるようになります。しかし、睡眠が不足するとこの働きが妨げられ、さまざまな悪影響が連鎖的に起こります。
・コルチゾールの上昇:睡眠不足によってストレスホルモンが増加し、肝臓が余分なブドウ糖を放出してしまいます。
・炎症の増加:インターロイキン-6などの炎症性マーカーが増加し、インスリンの働きを妨げます。
・現実的な影響:2023年にイギリスで行われた1,500人を対象とした研究では、1日6時間未満の睡眠が2型糖尿病リスクを2倍に高めることが明らかになりました。睡眠時無呼吸症候群も、糖尿病患者に多く見られ、インスリン抵抗性をさらに悪化させます。
夜間の血糖変動:「暁現象」と「ソモジー効果」
朝起きたときに血糖値が高い? それには主に2つの原因が考えられます。
・暁現象(Dawn Phenomenon)
午前3〜8時にかけて、コルチゾールや成長ホルモンの影響で肝臓からブドウ糖が放出されます。インスリン抵抗性があると、この急増を処理できません。
・ソモジー効果(Somogyi Effect)
夜間低血糖の反動として血糖値が急上昇する現象。過剰なインスリンや薬の影響で起こりやすいです。
対処法:
寝る前と午前3時に血糖を測定してみましょう。
・就寝時の目標値は 6〜8 mmol/L
・朝の高血糖が続く → 暁現象の可能性
・午前3時に 4 mmol/L 以下 → ソモジー効果の可能性
主治医と相談のうえで薬のタイミングを調整し、夜はオートケーキ+ピーナッツバターのようなバランスの良い軽食を取りましょう。
見過ごされがちな夜間低血糖のリスク
血糖が 4 mmol/L を下回っても、眠っていると気づかないことがあります。特に「低血糖無自覚症」の人では、注意が必要です。
NHS(イギリス国民保健サービス)の調査によれば、重度低血糖の3件に1件は睡眠中に起きているとのこと。
安全のために:
・ブドウ糖タブレットを枕元に常備
・CGM(持続血糖測定器)を使って夜間のアラートを設定
・夜遅くの運動やアルコール摂取は控える(症状を隠してしまう可能性あり)
睡眠不足が血糖を乱すメカニズム
たった一晩の睡眠不足でも、空腹時血糖値が23%上昇すると、2022年の研究で報告されています。慢性的な睡眠不足は…
・インスリン感受性を20%低下
・糖尿病合併症のリスクを増加
血糖を安定させる睡眠習慣のコツ
・7〜9時間の睡眠を目指す:アプリ(例:Sleep Cycle)でパターンを記録
・環境を整える:遮光カーテン・室温調整・寝る前のスクリーン断ち
・賢く間食を:複合炭水化物+タンパク質or脂質(例:ギリシャヨーグルト+ベリー)
・睡眠時無呼吸の検査:いびき・息切れがあれば医師に相談を
まとめ:睡眠の「質」も「量」も重要
ただ長く眠ればいいというわけではありません。毎日同じ時間に寝る、リラックスした夜のルーティンを作るなど、小さな工夫の積み重ねが血糖値の安定や糖尿病リスクの低下につながります。
UKバイオバンクの研究によると、睡眠時間が7時間未満の人は糖尿病の発症リスクが37%高まることが明らかになっています。
つまり、休むことは「甘え」ではなく、「代謝の健康を守る戦略」なのです。
▶︎さらに深く知りたい方はこちら
→ 睡眠と糖尿病に関するすべての質問に対する科学的根拠に基づいた回答
おやすみなさい、そして穏やかな血糖バランスを🌙
※本記事は、ADA(米国糖尿病学会)、NHS、Sleep Foundationの臨床研究に基づいています。個別のアドバイスは必ずかかりつけ医にご相談ください。
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